大切なことは、位置で覚えている。
【思い出の本屋さん(2)】東京駅・八重洲ブックセンター
親愛なる君に

【思い出の本屋さん(2)】東京駅・南口「八重洲ブックセンター」。
博報堂の新入社員時代、毎日、通いました。
これは、帰り道に寄るというのんびりしたものではなくて、
必死の仕事でした。
その頃、僕のオフィスは、ガードをはさんだ丸の内南口にありました。
当時、八重洲ブックセンターは、東日本最大で、できたばかりでした。
「タンポポの写真を探してこい」
と、先輩に言われると、探してくるのが、僕の仕事でした。
タンポポの写真なら、なんでもいいのではありません。
細かい指定があるのです。
「ほら、よくあるだろ、白い綿毛が、飛んでいく感じの、ああいうの」
「ほら、よくあるだろ」という写真ほど、探すとないものです。
しかも、のんびり探しているヒマはありません。
植物コーナーにない時に、童話コーナーにあったりもします。
「ふだんから、どういう写真は、どこにある」ということを、
「神経衰弱」のように記憶しておかなければなりません。
「こういう黄色のタンポポじゃなくて」という今日見つけた
黄色のタンポポの写真が、
明日は別のプレゼンに必要になって、
「あれっ、昨日あったはずなのに、見つからないぞ」という毎日でした。
おかげで、新刊コーナーよりも専門書コーナー、
本の中身よりも本の挿絵に強くなりました。

                        彰宏より。
P.S.
「それは、本の右の上に描いてある」という位置で、
今でも、覚えています。