本を膨大に読んでいると、美人にモテる。
(【思い出の本屋さん(3)】御茶ノ水・明治大学生協書店)
親愛なる君に

その本を、どこの本屋さんで買ったかは、
必ず覚えています。
僕の本棚で、硬い本は、
たいてい御茶ノ水の明治大学生協書店で買った本です。
生協書店は、会員になると1割引きなんだけど、
別に明治の学生でなくても、会員になれました。
今は、この建物はなくなりましたが、当時、
僕はまだ、大学生ですらなく、駿台予備校に通う浪人生でした。
御茶ノ水の明治大学生協書店で、4つのことを学びました。

1.硬い本を読むこと。
2.全集で読むこと、
3.友達の薦める本を読むこと。
4.注文して買うこと。

その頃、つきあっていた彼女が、
「高橋和巳が好き」と言ったひと言で、
僕は「高橋和巳全集」を、注文して買いました。
全20巻。箱入り。ピロピロのパラフィンつきです。
彼女の発言に、「そうなんだ」と言いながら、
その時僕は、先発投手の割には、気が弱いのが弱点と言われていた
巨人の高橋一美投手と区別がついていませんでした。
彼女に言われると、1冊読んでみるのではなくて、
全集で全部読んでやるというのが、僕の流儀でした。
これは、いまだに変わりません。
注文した全集が届いて、
予備校の寮までもって帰るのが、大変でした。
宮城沖地震が、もう少し後に来ていたら、
僕は高橋和巳全集の下敷きになって今、いなかったでしょう。
予備校の友達に、別役実さんを教えられたのも、ここでした。
早稲田の美術学科志望の美人と話すために、
高階秀爾先生や坂崎乙郎先生の本を読みあさったのも、ここでした。
「本が好きな男が好き」という彼女のおかげで、
僕は、膨大な本を読むことができました。

                        彰宏より。
P.S.
でも、それ以降出会った美人は、
みんな本を読んでいる男が好きでした。