台風の日には、不思議な気持ちになる。
(稲川淳二さんの『ミステリーナイトツアー2005』)
親愛なる君に

稲川淳二さんの『ミステリーナイトツアー』に、行ってきました。
折しも、この夜は、大型台風11号の関東上陸の時刻とぶつかって
23区にも警報が出ているにもかかわらず、超満員。
台風の日は、人を不思議な気持ちにさせるようです。
そんな日に、稲川さんの怪談を聞けるなんて、最高のシチュエーションです。

稲川さんのツアーには、いつも不思議なアクシデントが起きます。
この日も、稲川さんを驚愕させる事件が起きました。
座れるはずのない座席と座席の間から、
じっと稲川さんを見ている人がいたそうです。
稲川さんは、話をしながら、何度も、「そこには座れるはずがない」と
人数と座席を数えていたそうです。
その話は、怖がらせるための演出ではありません。
「すみません。いつもは、今日の32.5倍はきちんとできるんですよ。
急に、いつもと違う話の順番にしちゃったしね」
これも、低気圧のなせるわざでもあるし、
稲川さんの霊感のなせるわざでもありますね。
そんな日に、稲川さんの話を聞けたのは、ラッキーでした。

「怪談は、1人では成立しないんです。
語り手と、聴き手がいて、初めて怖くなるんです。
ジェットコースターだって、乗る人がいなければ、面白くないんです」
と稲川さんは、話されました。
稲川さんだけでなく、お客さん全員が、妙な気分をかもし出していたのでしょう。
「怪談というのは、考古学みたいなもので、古い土器の破片を集めるようなものです。
別の場所から掘り起こされたものが、ひとつふたつと見つかって、
全体像が見えてきて、それでも、見つからない部分が、なんとなく、見えてくるんです」
この日の出来事も、いつか別の破片とつながって、
「ああ、あれは、そういうメッセージだったんだ」と、わかる日がきっとくるでしょう。

                        彰宏より。
P.S.
稲川さんは、楽屋でも、本番と同じように、
「実は、今日のあの話には、続きがありまして……」と、お話を続けてくださいました。
ステージとふだんが、まったく同じ稲川さんに、
やさしさを感じました。