ウィリアム テルが子供の頭に載せたリンゴは、もっと小さかった。
(高橋英樹博士)
親愛なる君に

ドラマ『捜査検事 近松茂道6―拳銃魔―』の撮影の間に、
高橋英樹さんからうかがった話で、
面白い話が、ありました。
僕は、リンゴ園の経営者の役でした。
僕は、リンゴの本を役作りのために読んでいきました。
その本によると、意外にも、日本のリンゴ生産量は、
世界的に見ると、16位で、
決して量的には多いものではありませんでした。
中国・トルコ・フランスが、主要産地でした。
それでも、日本がリンゴの国のイメージがあるのは、
きっと、品種改良で、
おいしい付加価値の高いリンゴを生産しているからに違いないですね、
というのが、僕の仮説でした。
すると、さすが、体験の多い高橋博士が、
「ロシアで、食べたリンゴは、ちっちゃかったよ」
今まで、あの小さなリンゴは、品種改良で小さくなったんじゃなくて、
もともと小さかった野性のリンゴを、
品種改良で大きくしたと考えるべきだったんですね。
そこで、高橋博士は、恐るべきコメントをしました。
「すると、ウィリアム テルが子供の頭に載せたリンゴは、
プラムくらいの小さなリンゴだったかもしれないね」
この ひと言は、衝撃でした。
僕の、46年間、描いてきたウィリアム テルの名場面でのリンゴが
修正されて、一気に難易度が上がって、スリルが増しました。
僕にとっての、「ダヴィンチ・コード」でした。

                        彰宏より。
P.S.
やっぱり、『日本人の質問』の高橋博士でした。