男と愛人は、師弟関係になると、絆は深くなる。
(坂崎重盛さんの『「秘めごと」礼賛』)
親愛なる君に

坂崎重盛さんの『「秘めごと」礼賛』(文藝春秋)が、面白かった。
〈愚は、尊い徳〉として、
谷崎潤一郎や永井荷風ら、文豪の豪快な「秘めごと」を
紹介、分析しています。
「妾宅を持つことが、いかに男子の修行になるか」という
ストイックさに感銘を受けます。
歌人・斎藤茂吉が、27歳年下の愛人・永井ふさ子へ書いたラブレターは、
茂吉の短歌に劣らない名文です。

〈ふさ子さん!ふさ子さんはなぜこんなにいい女体なのですか〉

相手の体に、「女体」と持ってくるところが、天才歌人ゆえです。
ちなみに、この本には、天才をのめりこませた
ふさ子さんの写真も、出ています。
写真で言うと、武田泰淳をのめりこませた
魔性の女・武田百合子の写真が迫力があります。
百合子は、豹のお面をかぶって、泰淳を見つめています。
泰淳の持つタバコの煙が、ちょうど豹のお面にかかっていて、
ますます魔性の気配を漂わせています。
この写真も、必見です。
ふさ子の場合、茂吉の年の離れた愛人であり、同時に、弟子でした。
深い絆で結ばれる男と愛人は、根底に師弟関係があるのです。

                        彰宏より。
P.S.
「あなたの恋人兼、弟子になりたい」という君を、思い出したよ。