愛人になる女性のほうが、はるかに才能があり、人生を謳歌している。
(坂崎重盛さんの『「秘めごと」礼賛』2)
親愛なる君に

坂崎重盛さんの『「秘めごと」礼賛』(文藝春秋)を読んでいると、
最初は、男性の秘めごとの話なんだけど、
だんだん女性の秘めごとは、もっと奥が深いというのが、わかってきます。
愛人を持つ男より、はるかに、愛人になる女性のほうが、
テンションが高くて、才能もあり、人生を謳歌しているのがわかります。
とりわけ、女流歌人のテンションは、高いです。
俵万智さんもメルヘンですが、エロティックでもあります。

〈落ちてきた雨を見上げてそのままの形でふいに、唇が欲し〉
〈生えぎわを爪弾きおれば君という楽器に満ちてくる力あり〉

熱情と言えば、わが同郷・堺の与謝野晶子。

〈むねの清水あふれてついに濁りけり君も罪の子我も罪の子〉

こんなのが、もっと国語の教科書に載っていれば、
僕の所属していた短歌部は、女の子も、いっぱい入っただろう。

〈ブラウスの中まで明るき初夏の日にけぶれるごときわが乳房あり〉(河野裕子)
〈口移されりぬるきワインがひたひたとわれを隈なく発光させいる〉(松平盟子)
〈円卓よりしずかに匙はすべり落ち抱きすくめらる腕より胸へ〉(栗木京子)
〈一週に一度は自慰をするという女医大の美しき友〉(湯浅真沙子)

この歌は「美貌の友」というタイトルから、レズの歌だとわかります。
レズもまた、秘めごとという尊い徳なのですね。

〈秘めごとは、一つの創作活動〉
〈秘めごとをするには、気力、体力、そして思想が必要〉

坂崎さんの慧眼に、勉強になりました。
秘めごと、頑張りたいです。

                        彰宏より。
P.S.
万葉集も古今和歌集も、実は濃い話だと思うと、受験勉強も楽しいですね。