読み手と同じく、書き手も緊張して、ドキドキしている。
(山咲千里さんの『経験』)
親愛なる君に

本を読むことは、作者と、デートするのに似ています。
書き手と読み手のデートです。
最初は、どちらも、緊張しています。
読み手は、どんな本だろうとドキドキしているし、
書き手も、同じように、緊張しています。
山咲千里さんに「兄貴、読んで下さい」と本を、いただきました。
千里ちゃんは、いつも僕を「兄貴」と呼んでくれて、
その呼び方を、僕は気に入っています。
『経験』(アクセス・パブリッシング)。
千里ちゃんは、自分では、いつも自信なさげだけど、すばらしい作家です。
千里ちゃんが、習い事をしていく体験レポートです。
千里ちゃんは、世間の印象とはまったく違って、まじめで「緊張しい」です。
千里ちゃんのまじめで「緊張しい」であることは、
この本を読んでよくわかります。
雑誌の連載ということもあるけど、最初のほうは、かなり緊張していて、
ラストの書道を習う章で、やっと、リラックスしているのです。
習い事に緊張するのではなくて、
文章を書くということに、緊張しているのです。
緊張すると、サービス過剰になります。
書き手が緊張すると、読む人も緊張してしまうので、
僕は、冒頭から、なれなれしく書き始めます。
ラストの章で、もっとも、ふだんの千里ちゃんの素の文章が出ています。
デートの別れ際のタクシーの中で、やっと打ち解けられて、
別れがたいみたいな感じです。
本を読む時は、ラストの章を、最初に読むと、
読む人の緊張も、ほぐれます。
読む人は、書く人も、緊張してドキドキしているということを、
察してあげてください。

                        彰宏より。
P.S.
デートしているような、ドキドキするいい本でした。