男は、どんな時でも、平静を装うべし。
(【思い出のお化け屋敷】)
親愛なる君に

お化け屋敷は、部屋に入った時から、
(きっとこうなるに違いない)と、自分で怖い展開を予想しはじめます。
「怖いのは、苦手ですか?」とスタッフのお姉さんに言われて、
「だ、大丈夫です」と返事します。
そこは、4人用のメイクルームのセットでした。
席が壁に向かって2つ並んでいました。
後ろにも、同じように2つ並んでいました。
前には、真っ黒な鏡がありました。
肘かけには、不気味な どくろ がありました。
「肘かけを、しっかりつかんでいてください」という注意事項に、
(これは、揺れるんだな)と、予想しました。
(目の前の鏡に、幽霊が現れて、襲いかかられる……)
(いや、そう見せかけて、ひょっとすると、後ろから来るかもしれない……)
(いや、上から来るか、下からも……)
と、いろいろ考えているうちに、終わりました。
スタッフのお姉さんに「怖かったですか?」と聞かれたので、
「いやあ、想像したほどは……」と答えると、
お姉さんは笑って、紙を渡してくれました。
そこには、僕の心拍数が、プリントアウトされていました。
肘かけのドクロは、心拍計だったのです。
心拍計のグラフは、紙をはみ出して、上まで振り切れていました。

                        彰宏より。
P.S.
それでも、平静を装うところが、男の子なのです。