樹には、物語がある。
(「こぶケヤキ」後日談)
親愛なる君に

「こぶケヤキ」の話を [レター] で紹介したら、
オークヴィレッジの稲本正さんから、
「その話の続き」を、教えていただきました。

〈信州の戸隠村に80歳を過ぎた木こりのおじいちゃんがいて、
その方は人生のほとんどを森に入って木を切り続ける、
これぞ「木こり」という典型的な人です。
80歳を超えながら体は実にしっかりしており、
いまだに1メートル20センチのチェーンソーを自在に操る達人です。
オークヴィレッジの材料職人で70歳近くになる住さんを連れて行ったのですが、
住さんがその大きなチェーンソーを持ち上げて操る真似事をした瞬間、
「お前も出来るな」と言って、
木こりのおじいちゃんは急に打ち解けてくれました。
「80年の人生の中でこれが初めてでこれが最後だという木の宝物があるんだ」
と言って見せてくれたのがこの「こぶケヤキ」でした。
60歳を過ぎた私も日本中、世界中の森を歩いていますが、
このような こぶがあり、
それでいてこれほど木目が元気そのものな木は見たことがありません。
このテーブルを「サン・フロム・ザ・ホライズン」(水平線の夜明け)」
と名づけたのも、
昇る朝陽から与えられるパワフルなエネルギーを
常に感じられる作品にしようと思ったからです。
何しろ銘木を超えた宝のような木だと思います〉

こぶは、昇る太陽だったんですね。
樹には、物語がありますね。

                        彰宏より。
P.S.
「こぶケヤキ」の写真を、あちこちで見せています。