「いろいろ、オモロかった」が、最高の別れのセリフだ。
(映画『イヌゴエ』)
親愛なる君に

映画『イヌゴエ』を、見ました。
動物モノ映画という先入観に、けたぐりをかまされました。
映画を見る時は、(ああ、たぶん、こんな話しなんやろなあ)と、
誰でも予測します。
動物モノの場合、その予測から、大きくはずないことが、
また、大事なことです。
『イヌゴエ』は、その心理を利用して、ひっくり返しました。
タイトルからして、(犬がしゃべる話やろ)と思っていたら、
第一声が、ぼそぼそしゃべりのおっさん声であることに、まず驚き。
名優・遠藤憲一さん、さすがです。
次に、話すセリフが、
(人間って、くっさいのう。腹減ったあ。ああ、交尾したいのう)で、
これは、子供用動物映画でないことが判明、座り直しました。
彼女が、親友に寝取られたり、
可憐な少女が、実は、子持ちバツイチで、動物虐待をしていたりと、
リアルさが、北野武ワールドに通じる大人っぽさがあります。
構図も、凄い。
動物モノは、アップの編集になることが多い。
かわいさを出す効果と、動きの思い通り行かない動物を、
編集で細工しやすくするためのアップです。
ところが、この映画は、動物込みの引きの絵が多いのです。
これは、演出する側からすると、かなり難しくなります。
こんなところも、大人でした。
「まあ、いろいろ、オモロかったな」という別れのセリフも、大人でした。

                        彰宏より。
P.S.
オチも、しっかりついていて、それは、内緒にします。
オチが、テーマになっているところも、よくできています。