優しい人の復讐が、一番エスカレートする。
(劇団☆新感線『蛮幽鬼』)
親愛なる君に

劇団☆新感線の『蛮幽鬼』を見てきました。
僕の小学生時代のたった3冊しかなかった本の1冊、
『モンテ・クリスト伯』の新感線バージョンだから、
面白くないわけがない。
でも、『モンテ・クリスト伯』の翻案どころの騒ぎではなく、
本歌取りとして、原作をはるかに超えた作品になった。

エドモン・ダンテスが、牢獄で出会うのが、
高潔なファリア神父ではなく、
ハンニバル・レクターだったというところで、大爆笑だ。

ところが、大爆笑している人は、1人もいないで、
大恐怖になっていくのが、レクター役の堺雅人さんのパワーだ。
満面の笑みを浮かべながら人を殺していく殺人鬼に、
堺さんの笑顔がはまった。
はまりすぎて、再演の際、代役がきかないので、
堺さんのスケジュールから、押さえないといけないですね。
堺さんも、代表作になってしまったので、今後、家定をやっても、
実は、殺人鬼と思われるでしょうね。
レクターの復讐劇というサブストーリーが、
エドモン・ダンテスの復讐劇を立体的にしました。

復讐劇は、悪人が復讐しても迫力は出ません。
優しい人が、復讐鬼になったら、ハンパじゃないのです。
だから、上川隆也さんと堺雅人さんだったのですね。

親分 vs.親分の戦いより、若頭 vs.若頭の対決が面白い。
戦う相手が、相手の若頭、その親分、自分の若頭と、
1対3の戦いになるからです。
しかも、愛する恋人も、敵になるから面白い。

                        彰宏より。
P.S.
殺陣も、毎シーン、すべて演出が違うけど、
ほとんど動かないで敵を倒していく堺さんの冒頭の殺陣が、
一番かっこよかった。
あれは、ポケットに手を入れたまま相手を倒す
ジェット・リーですね。