僕が生体験をした森繁久弥さん。
親愛なる君に

僕は、早稲田大学時代、学校の裏に住んでいた。
映画館が学校だった僕は、卒業式の日も、映画館に通っていた。
映画と映画の合間に、卒業式を、見に行った。
自分の卒業式だから、見に行くというのも、変だった。

その時の僕のかっこうは、ジーパンにツッカケだった。
小野記念講堂は、きちんとしたスーツや学生服の卒業生と、
その父兄たちで超満員で、僕は卒業生なのに、入れなかった。

講堂の外に、祝辞の挨拶が聞こえてきた。
「諸君が、大学時代に学んだことは、きっと、社会に出て……」
聞き覚えのある声だった。
「きっと、社会に出て、一つも役に立たないだろう」
声の主は、先輩の森繁久弥さんだった。

                        彰宏より。
P.S.
さすが、森繁さん。
生で、声が聞けた貴重な体験だった。