映画の中に、映画を天から眺めている存在がいる。
(『十三人の刺客』と伊勢谷友介)
親愛なる君に

三池崇史監督の『十三人の刺客』は、
見終わって映画館を出てきた人がみんな、肩で息をしていた。
見た誰もが、乱闘シーンで、走り回っていたのだ。
サッカーのように、運動量の多い映画でした。
大御所の役者さんが、ずらりと並んで、
それぞれに立てる場面を作っても、
テンポが落ちないところが凄い。

オリジナル作品でありながら、
現代の作品になっている。
この中でも、現代に風穴を開けているのが、
伊勢谷友介演じる山男だ。
武士の対決を、1人外側から客観的に観察する視点だ。
こういう人物は、黒澤映画に必ず出てくる。
伊勢谷の山男が、死なないのは、
武士やお殿様の世界に生きていない野性のイノシシだからだ。
ラストに、ひょいひょいと死体を飛び越えていくシーンは
普通は、さっとカットで、場面展開するところだ。
カットしないで、延々残したところが、三池さんの深さを感じる。

                        彰宏より。
P.S.
三池さんは、黒澤映画の本流を継いでいるに違いない。