『キャバクラ嬢の「私が口説かれた言葉」』(総合法令出版)
評:井狩春男
(「週刊ダイヤモンド」 2002年11月2日号)

著者で、自分をブランドにしてしまった人は、
小生の知る限り、中谷彰宏さんだけある。
こういう場合、仮に著者がこの世を去っても、
ブランドは残るのだ。
 
中谷さんは、本を売っているのではない。
ライフスタイルを売っている。
ほとんどの著者に、まだこういう考え方はない。
 
月に10冊前後の新刊を出している。
小生の10年分を1か月で書いてしまう勘定になる。
 
既刊は500冊に近づこうとしている。
こんなに量産できるのは、
竹村健一さんと中谷さんぐらいなものだろう。
 
中谷さんが次々と本を出せるのは、
事務所のスタッフが優秀(本が売れる方向がどっちだか知っていて、
中谷さんをサポートできる)であることと、
各出版社の中谷さん担当の編集者も、
その方向と中谷本のつくり方を熟知しているからだと思う。
つまり、すべてが売れるように組まれていて、
円滑に回っている。
 
売れない本は、出す意味がない。
人に読まれない本を出してどーする。
売れる本がイイ本であることを、中谷さんはご存知なのだと思う。
ベストセラーの方程式を身につけているのだ。

『キャバクラ嬢の「私が口説かれた言葉」』(総合法令出版)

こんな読みたくなるタイトルを、たやすくつけられるものではない。
このセンスのよさが、中谷ブランドの中心部にある。

「キャバクラ嬢の」と頭につくだけで、
男はちょっと読んでみようと思う。
「私が口説かれた言葉」は、人を説得する(墜とす)方法を学べるのと、
興味津々ということもあって、男は思わず手が伸びる。
また、女性も、
どんなふうに誘われるのかを知りたくて、読んでしまう。

ベストセラーの方程式からいえば、
「身近な恋愛」(キャバクラのこと)と、
口説くという「身近」、
言葉という「短い」で、
必ず売れるのである。
90ポイント。