『男は女で修行する。』(大和書房)
評:井狩春男
(「北海道新聞」 2002年12月15日付)

「女は、デキる男を見極める」
「女は、大きい小さいにこだわらない」
「女は、最後まで何度も、楽しむ」
「女は、気持ちのよさを最優先する」
「女はガマンしない」
「女は、ココ一番では目をつぶらない」
「女は、稼ぐだけの男を信用しない。女は、男の価値を試す」

女性から、ビジネスの法則を学ぼうとするこの本は、
「女で苦労し、そこから学ぼう」
から始まる。

サブタイトルに、「ビジネス運を上げる60の法則」とある。
この手の本は、50-60がちょうどいい。
これより少なく、たとえば20-30であれば、コメントが長すぎてしまい、
読者に、そんなにダラダラ書いてほしくない、という気を起こさせる。

それより長く、70-80ぐらいであるならば、
ひとつのコメントが軽くなってしまい、読者にもの足りない印象を与えてしまう。
 
長いのであれば、『小さいことにくよくよするな』という本のように、
ちょうど100がいい。
これだけのことがわかるのであれば、読者は満足してくれる。

中谷彰宏さんは、月に8-10冊の新刊を出す。
週に2、3冊出してしまう著者は、日本に5人といない。

どういう風に書くのかはあきらかではないが、
おそらく、見出しを最初に考えるのではないか。
この本のように、
「一人の恋人を大切にできる男が、大勢の女にモテる」
「男にとって、食べることが食事である。女にとっては、食べるまでのプロセスも食事である」
「男は、勝ち負けにこだわる。女は、ドラマにこだわる」
……と。
見出しができたら、完成も同じである。
これなら、2、3日で1冊書ける。
 
これだけの量産なのに、なぜこの本が抜き出て売れているかは、
売れる定番の「恋愛」と「ビジネス」を結びつけているからだ。
今や読者の主役であるビジネスマンの手をスムーズに伸ばさせた。
カバーの紅白も、売れた理由。

(「井狩春男のベストセラーの方程式」から)