【力を大地まで分散させて、
どこにも力を集中させない人。】
一度会っただけで、
強烈な印象に残る人がいる。
何年も会わなくても、
昨日会ったばかりに感じる人がいる。
初めて会ったのに、
幼なじみのように、感じる人がいる。
その人は、初めましてと握手をしたあと、
カバンから、何かを取り出した。
パジャマだった。
「今日は、泊まりがけで、
お話しするつもりで来ました」
こんな人は、初めてだった。
その人は、「力比べをしよう」と言った。
向かい合って立って、肘を押し合った。
どんなに押しても、受けきられた。
その人は、どこにも力を入れていなかった。
力を入れようとすればするほど、
こちらの力は一点に集中して、相手の思うつぼだった。
あそばれているのに、心地よかった。
「今度、力比べをする時は」と、いつも考えている。
そしたらまた、自然の力を教えられるに違いない。
あの時、桜井章一さんは、僕の中に、
自然のエネルギーを入れてくれたに違いない。
(「文庫版まえがき」から)
*
文庫版まえがき
力を大地まで分散させて、どこにも力を集中させない人。
まえがき 勝とうとするより、強くなろう。
●第1章 ホンモノの強さは、競争を越える。
●第2章 自然には、強くなるヒントがある。
●第3章 力を抜くほど、強くなる。
●第4章 何に賭けるかで、強さは決まる。
あとがき 強い男は、パジャマを持ち歩く。
(「目次」から)
※この本は2002年9月に東洋経済新報社から刊行された
『なぜあの人は強いのか』を、文庫収録にあたり再編集した
オリジナル版です。
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